金崎夢生というサッカー選手

今から10年ほど前になるだろうか、仕事でサッカーの話が良く出るからだったと思うが、俺もぼちぼちサッカーの話など出来るようにならねばと思ったのである。

見ていくには何か面白みを見つけなければいけないが、チームを応援するサポーターというのは敷居が高そうだ、ニワカはニワカらしく選手に対して興味をもって見ていった方が俺にはあっていると思い、たまたまETVの番組に出ていた金崎選手を見て「よし、こいつを追いかけていきながら日本のサッカーを見ていこうか」と思ったのである。

それからは、金崎選手の動向をニュース等で追いながらの代表選観戦がなんとなく私の生活の一部になっていった。いつか代表に選ばれたりせぬものか、海外の有名チームに行ったりしたら、なかなか生観戦が出来なくなるなと思いながらこの選手を追っていくのは、なかなかに私の生活に刺激的なものであった。というのも、この選手なかなかに見ていて面白い選手なのである。以下に、私がニワカ目線から見て感じた金崎選手の面白みをつらつらと書きあげていきたいと思う。

 

・超強気

 そもそもスポーツ選手という人種は強気でなくてはやっていけぬだろうが、高卒1年目でJ1チーム(当時大分)のスタメンに何度か選ばれ、臆することなくプレーしていた。プレースタイルも負けん気をむき出しにした強引なドリブル、自分に出されたボールは意地でもキープしようとする意地、敵陣へ向けての突進力は見ていて気持ち良い。なお、時に強引に過ぎるドリブルは良く敵DFに引っかかるし、思い切りよく打つシュートも実際はあまり入らぬ。

・思ったことがすぐ行動にでる

 超強気であることと関係するが、意思と行動が短絡に結びつくようである。1年目、チームがあまり勝てぬ時に、チーム批判ともとられかねぬような発言をしていたし、名古屋時代はロッカールームで元代表DFで人格者の闘莉王選手とつかみ合いの喧嘩もする。五輪代表候補に選ばれた時は現在代表MFとして定着しつつある柴崎選手とも掴み合いとなっており、以来代表というものとは縁が遠くなってしまっている。海外に行きたいとなったら、所属する名古屋から放出されてでも意思を貫く。そして行った先で干されてもめげずに出場機会を求めて違う場所に向かう。こんなに色々あるのに、本人にウェットな雰囲気は微塵も感じられぬ。なんたるメンタル。

・なれ合わない

 一時期はドイツで清武選手と一緒にプレーしていたが、チームの方針と会わなかったかすぐに干されるようになった。当時もドイツには日本人選手が何人かおり、上手くいかないなら同国人同士で食事でもして気を紛らわせたりすれば良いのにと思うが、あまり日本人選手の食事会等の場にいるような話は聞かなかったように思う。たぶんあまり気にしないで普段通りに練習をしていたのだろう。出場機会が得られそうな話があると、あまり日本人がいないだろうポルトガルの2部にさっさと移籍してしまう。スポーツ選手なら当たり前とは思うが、あまりにも日本人離れした感性である。

 

ここまで書き連ねてきたが、金崎選手の面白みの半分も伝えられてはおらぬように思う。しかし、その魅力にあてられた人間は彼に注目せずにはいられぬのだろう。ポルトガル2部のチームでは、日本人に対する評価が低いだろうにも関わらずチームの中心となっていったと聞く。生来の負けん気と気持ちを前面に押し出すプレースタイルがチームメイトの心を打っていったであろうことは想像に難くない。また気にくわぬことがあっても、その場で爆発こそすれ、後にはあまり引き摺らぬ性格も、現地の人々に愛されたのではないかと感じる。この性格は、帰国後に発生した事件でも良い方向で発露したのは多くの人の知るところであろう。

 

今、彼は鹿島アントラーズに所属し、チームに必要不可欠なアタッカーとして活躍している。海外から日本に帰ってくることは、本来ならば色々と思うところがあるだろうが、彼のプレースタイルや言動からはそんなウェット感はとんと伺えぬ。毎試合で見せるプレーからは、彼の気持ちの強さばかりが伺えるのみである。彼の面白さが、多くの鹿島サポーターの心を掴んでくれればと切に願う。

 

いま、国内には宇佐美選手や武藤選手といった、技術的にもセンス的にも年齢的にも見ていて面白い選手がおり(しかも彼らはシュートを打てばゴールに入るのである)、なかなか金崎選手に注目が集まることが少ないが、こんなに気持ち一つで魅了してくれる選手がいるのだということをお知らせしたく筆をとった次第。

願わくは、その魅力を失くすことなくW杯の代表の舞台に返り咲き、「ミスター第一印象」などと訳の分からぬDISぶちかました、人気ブロガーのクソ野郎に謝罪記事を書かせる日が来ることを望みつつ(謝罪記事の後、「気にしていない」と笑顔でサムアップしているところまで想像しつつ)今日は筆を置くことにする。